自己成就予言と経営──「滅びの予言」を「進化の予言」に変える方法
- Yutaka Sato

 - 9月21日
 - 読了時間: 3分
 

経営には、戦略や資金、商品力といった要素がもちろん大切です。けれど実際には、それ以上に大きな影響を与える“見えない力”があります。
それは、経営者自身の思い込みです。
「きっとこうなるに違いない」と信じた未来が、そのまま行動を通じて現実化していく。心理学ではこれを自己成就予言と呼びます。
特に事業承継の場面では、この自己成就予言が経営の命運を左右することがあります。「どうせ変えられない」という気持ちが、その通りの未来を作り出してしまうのです。
自己成就予言とは何か
自己成就予言とは、信じた未来像を無意識に実現してしまう心理現象のことです。「失敗するかもしれない」と思い込みながら行動すれば、その恐れに引きずられ、結果的に失敗に近づいてしまう。
経営の現場での典型的な“負の予言”はこうです。 •「先代が会長で居座っているから、改革なんてできない」 •「ここまで続けてきたけれど、もう業界自体が時代遅れだ」
•「多勢に無勢だから、自分の想いなんて通るはずがない」
こうした言葉は、単なる愚痴に見えて、実は未来の設計図になってしまいます。予言通りに動いてしまうからこそ、事業そのものが衰退していくのです。
価値観統合が果たす役割
では、負の自己成就予言をどうやって断ち切ればいいのでしょうか。
そのカギになるのが、価値観統合です。
価値観統合とは、経営者の深層価値観(WHY)と、事業の方向性(HOW/WHAT)をつなぐプロセスのこと。これによって「自分は何のためにこの事業を続けるのか」がクリアになり、「これならいける」という確信が生まれます。 承継者にとっては特に大きな意味を持ちます。なぜなら、価値観統合は「先代の理念」と「自分自身の価値観」を調律する作業でもあるからです。両者のバランスを取りながら、自分の腹の底から納得できる方向性を見つけられたとき、経営者は逆境の中でも行動を持続できるのです。
アファメーションとの接続
ここで、もう一つの概念と結びつきます。それがアファメーションです。
アファメーションとは、ポジティブな言葉を繰り返し唱え、自己イメージを高める方法。言い換えれば「プラスの自己成就予言」を意識的に育てるための手法です。
しかし単なるポジティブ思考だけでは、根拠のない自己暗示になってしまいます。そこで価 値観統合が効いてきます。
価値観統合によって「自分は何を affirm(繰り返し言葉にする)のか」が明確になれば、アファメーションは単なる励ましではなく、根拠ある確信を強化する仕組みに変わります。
正のスパイラルをつくる
この二つを組み合わせることで、経営には強力な正のスパイラルが生まれます。 1. 価値観統合──自分と事業の軸が一致する 2. アファメーション──その軸を繰り返し言葉にする 3. プラスの自己成就予言──未来への確信が強化される 4. 成長の現実化──行動が変わり、成果が出る
これは経営全般に通じる普遍的な仕組みです。そして事業承継の現場においては、まさに「滅びの予言」を「進化の予言」へと変える力Íになります。
おわりに
自己成就予言は、目に見えないけれど確実に経営を左右する力です。その力をプラスに転じるための最強の仕組みが、価値観統合とアファメーションの組み合わせだと私は考えています。
経営の未来は、戦略や数字だけでなく、経営者自身がどんな未来を信じているかによって決まります。
最後に。 あなたの事業は、いまどんな未来を自己成就させていますか?
