組織の価値観は「調整」ではなく「設計」で統合できる
- Yutaka Sato

- 12月21日
- 読了時間: 4分
― WHY・HOW・WHATの折り合わせ方 ―

組織の中で起きる停滞や摩擦は、
能力不足や努力不足が原因だと思われがちです。
でも実際には、その多くが
「価値観がうまく折り合っていないこと」 から生まれています。
・やること(WHAT)は決まっている
・行動の仕方(HOW)も示されている
・それでも、どこか納得感がない
こうした状態の背景には、
WHY(深層価値観)が置き去りにされている という構造があります。
組織の価値観統合で本当に大切なのは、
WHYを起点に、HOWとWHATをどう折り合わせるか。
そのための補助フローとして、有効なプロセスがあります。
補助フローとしての「価値観の折り合わせプロセス」
① 深層価値観の言語化(WHY)
最初に行うべきことは、
一人ひとりが「何のために働いているのか」を言語化すること です。
・どんな瞬間に意味や満足を感じるのか
・何が満たされると「よい仕事をしている」と思えるのか
たとえば、
•信頼関係を築きたい
•無駄を減らしたい
•美しさや整合性を大切にしたい
こうした価値観は、
評価制度や役割とは関係なく、すでに個人の中に存在しています。
② 個人価値観と組織価値観を並べて見る
次に行うのは、
個人の価値観と、組織が掲げている価値観を
対立させずに並べて眺めること です。
ここで重要なのは、
どちらが正しいかを判断しないこと。
見るべきポイントは、
•この価値観は、組織のどこで活かせそうか
•もしズレているなら、どの場面で摩擦が起きているか
価値観の対話とは、説得や調整ではなく、
関係性を可視化する作業 です。
③ 折り合い・統合の設計フェーズ
ここが、価値観統合の核心です。
問いは次の形に変わります。
「一方の価値観を満たすことで、
もう一方の価値観は、どう活かされるか?」
たとえば、
•個人の価値観:自分らしく自由にやりたい
•組織の価値観:チームワークを重視したい
この場合、
自由を制限するか、チームを諦めるか、ではありません。
自由な発想がチームに刺激や視点をもたらす役割
として再配置することで、
両方の価値観を同時に活かすことができます。
価値観は、ぶつけ合うものではなく、
組み合わせることで意味が立ち上がるもの です。
④ 共通の「在り方(HOW)」を言語化する
統合の方向性が見えてきたら、
次に必要なのが HOW(在り方) の言語化です。
・この組織では、どんな姿勢で仕事をするのか
・どんな関わり方が「らしい」のか
HOWはルールではなく、
行動を選ぶときの判断軸 です。
この軸が共有されていると、
細かい指示がなくても、行動のズレが起きにくくなります。
⑤ 具体行動(WHAT)に落とし込む
最後に、価値観と在り方を
具体的な行動(WHAT) に落とします。
たとえば、
•チームミーティングで必ず一人ずつ意見を出す
•月に一度、自分の視点や工夫を共有する場を設ける
大切なのは、
なぜその行動をするのかが価値観と結びついていること。
そうでなければ、行動は形骸化してしまいます。
🎯 このプロセスがもたらすもの
この価値観の折り合わせプロセスには、
次のような特徴があります。
• ズレを無理に矯正しない
• 個人と組織の価値観を橋渡しする
• 行動に一貫した意味を持たせる
結果として、
「やらされている組織」から
「納得して動ける組織」へと変わっていきます。
まとめ:価値観統合は、感情論ではなく設計でできる
組織の問題は、
人の問題ではなく構造の問題であることがほとんどです。
WHY(深層価値観)を起点に、
HOW(在り方)とWHAT(行動)を丁寧に折り合わせる。
このプロセスを踏むことで、
個人も組織も、無理なく前に進める状態が生まれます。
価値観統合は、偶然起きるものではなく、
設計できるもの。
その視点が、
これからの組織づくりの土台になっていくのだと思います。

