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AIはなぜ“新しい価値”を既存の枠に当てはめてしまうのか?

  • 執筆者の写真: Yutaka Sato
    Yutaka Sato
  • 12月6日
  • 読了時間: 4分

一次研究に基づいて、その構造を丁寧にひもとく。


AIは“新しい価値”を扱えない

AIについて調べているとき、

「革新的なアイデアや“まだ言語化されていない価値”が、AIによって“知っている枠”へ当てはめられてしまう」

そんな感覚を覚えたことはありませんか?



これは、複数の一次研究で確認されている “構造的バイアス” が背景にあります。


今回の記事では、

査読済み論文・技術調査・学術レビューをもとに、

AIがなぜ“未知の価値”を苦手とするのかを

できるだけわかりやすく整理します。


そして最後に、

この構造が 味語り® の本質とどのようにつながるのか をお伝えします。





AIは「既存の合意」を優先するように設計されている


AIは膨大なテキストを学習しますが、その大半は

• Wikipedia

• Reddit

• 学術論文の要旨

• 一般的な教養文章

といった “すでに世界で合意されている情報” です。


そのため構造的に、

学習データに存在しない価値は、正しく評価できない。


評価できないものは、既存の知識に当てはめることで処理しようとする。


これは複数の研究で一貫して示されています。




一次研究から分かる「AIが新しい価値を既存知識に当てはめてしまう理由」


✦① 多数派への収束(Preference Collapse)

Xiao et al. (2024)

“On the Algorithmic Bias of Aligning Large Language Models with RLHF”



この研究では、RLHF(人間フィードバック学習)がもたらす構造的問題として、

AIが少数派の視点や新しい価値を正しく扱えず、

“多数派の解釈へ当てはめてしまう”現象(preference collapse)が起きる

ことが示されています。


革新的・未言語化・未成熟の価値ほど、

既存の枠に押し込まれて見えなくなるとしています。



✦② もっともらしさ優先(Coherence > Factuality)

Lin et al. (2024)

“Towards Trustworthy LLMs”




この大規模レビューによると、

LLMは「事実」より「もっともらしさ」を優先する

という構造的傾向を持っています。


未知の概念が来ると、

• 文脈に合わせて“補正”

• もっともらしい説明を即興生成

• ときに否定や矮小化

が起きる。


これも未知の価値を

既存の意味に当てはめる 動きです。



✦③ 権威・既存構造への依存(Authority Bias / Bandwagon Effect)


Ye et al. (2024)

“Justice or Prejudice? Quantifying Biases in LLM-as-a-Judge”



この研究では、LLMが“評価者(LLM-as-a-Judge)”として振る舞うときに、

次のような構造的バイアスを示すことが定量的に示されています。


権威バイアス(Authority Bias)

 権威ある情報源の記述を、内容の正しさに関係なく“正しい”と扱いやすい。


バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)

 多数派の意見や、よく見られるパターンを“より妥当”だと判断しやすい。


これらはどちらも、

既存の構造・支配的な知識を優先し、

新しい視点や少数派の価値を“知っている枠に当てはめてしまう”

という動きを生むバイアスです。


つまりAIは、

革新的・未成熟・少数派の価値が提示されたとき、

「正しいかどうか」ではなく、

“どれだけ既存の構造に近いか”を基準に判断してしまう。


これは記事全体を通して示している

「未知の価値を既存の解釈に当てはめる構造」を

別の角度から強力に裏づける研究だと言えます。




この構造は、人間の“内面”にも存在している



実は、深層価値観を言語化する前の私たちは、

どうしても「他人の価値観」という“既知の枠”で自分を理解しようとします。


その結果、


• 人と比べて落ち込む

• 評価軸が外にあり続ける

• 本音がわからなくなる

• いつもどこかでモヤモヤが残る



といった“生きづらさ”が生まれてしまう。


これは、AIが未知の価値を既知の枠に当てはめてしまう構造と

とてもよく似ています。


深層価値観とは、

他人の枠ではなく “自分の内側にある本質の想い” のこと。


ですから、それに触れた瞬間に世界の見え方が変わります。



味語り®が扱うのは “AIも人も自力で届かない領域”


AIが扱えるのは “既存の価値観の世界” だけです。


人間が自分で掘り起こせるのも、多くの場合

“慣れ親しんだ、他人から受け取った価値観”まで。


味語り®が扱うのは、

• まだ言葉になっていない心の奥底にある価値観

• 抑圧されてきた内面

• 形になる前の可能性


ここは 、AIにも人にも、自力ではアクセスできない領域 です。


だからこそ、深層価値観の言語化からブランド設計へとつなげる味語り®は、

AIでは届かない“人の本質”を扱う仕事として、これからさらに価値が高まっていくと感じています。




あなたの中にある“まだ名前のない価値観”はどこにあるだろう


AIが未確定な価値を既存の枠に当てはめるように、

人もまた、慣れ親しんだ他人の価値観に自分自身を当てはめて抑え込んでしまう。


今、まだ言葉になっていない価値観に光を当てることが大切だと思います。


あなたの中の、まだ輪郭を持たない価値観。

それは、これからのあなたの選択をどんなふうに変えていくのでしょうか?

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