本を出して分かった。私が渡したかったのは、答えではなく判断軸だった
- Yutaka Sato

- 3 時間前
- 読了時間: 7分

7月17日、初めてのKindle本を発売しました。
原稿を書き、何度も読み直し、表紙をつくっていただき、Amazonへの登録やペーパーバックの準備を進める。
出版までの間は、目の前にある一つひとつの作業に集中していました。
けれど、実際に発売日を迎えたとき、改めて考えたことがあります。
私は、この本を通して何を渡したかったのだろう。
自分がこれまで経験してきたこと。
会社員として働いてきたこと。
副業を始めたこと。
一度は事業を手放したこと。
そして、もう一度、自分の価値観を起点に仕事を始めたこと。
本の中には、私自身の選択や生き方を書きました。
ただ、私と同じ道を歩いてほしいわけではありません。
副業を始めることも、起業することも、会社員を辞めることも、誰にとっても正しい答えではないからです。
この本は、私の答えを渡すための本ではなく、読んだ方が自分の答えに戻るための本だったのだと、発売を迎えた今、感じています。
私の経験は、誰かの正解にはならない
私は、自分の経験を書きました。
けれど、その経験を成功法則として伝えたいわけではありません。
同じ出来事を経験したとしても、そこから何を感じ、何を大切にし、どの道を選ぶのかは人によって異なります。
ある人にとって救いになった方法が、別の人にとっては苦しさにつながることもあります。
実際、私自身も、誰かにとっては正しい方法を前にして、動けなくなった経験があります。
その方法が間違っているわけではない。
教えてくれた人に悪意があるわけでもない。
それでも、心のどこかが反応する。
「何か違う」
「自分ではなくなってしまう気がする」
「このまま進むと、自分を削ることになる」
その感覚を持ちながら、「正しいのだから従わなければ」と自分を動かそうとすると、少しずつ苦しくなっていきます。
私の経験から受け取ってほしいのは、私が選んだ道そのものではありません。
自分の感覚を、なかったことにしなくてよいということです。
人は答えがないから迷うのではなく、自分の基準が見えないから迷う
人は迷ったとき、答えを探します。
売れる方法。
失敗しない方法。
周囲から評価される方法。
効率よく成果を出す方法。
もちろん、方法を知ることは大切です。
すでに多くの人が経験してきたことから学べば、避けられる失敗もあります。
けれど、方法を知っただけでは動けない場合があります。
頭では正しいと理解している。
成果が出ている人もいる。
それでも、なぜか気持ちが動かない。
その背景にあるのは、能力や努力の不足ではなく、自分が大切にしているものとのズレなのだと思います。
ここでいう判断軸とは、人生や仕事の分岐点で、何を選ぶかを決める基準です。
何をすれば得をするか。
どちらを選べば成功しやすいか。
それだけではなく、
自分はどのような関係を築きたいのか。
どのような働き方なら、自分の力を自然に使えるのか。
何を守りながら仕事をしたいのか。
そうした、自分が大切にしている価値観も判断軸に含まれます。
判断軸が見えていない状態では、誰かの答えを採用するたびに、自分の感覚とのズレが大きくなります。
そして、うまく動けない自分を見て、「自分には力がない」と責めてしまいます。
けれど本当は、自分に合う答えを選ぶための基準が見えていなかっただけなのかもしれません。
違和感は、判断軸に戻るための入口になる
「何か違う」という感覚は、とても曖昧です。
理由を説明できないため、自分の弱さや迷いとして扱ってしまう人もいます。
考えすぎているだけ。
行動するのが怖いだけ。
覚悟が足りないだけ。
そう言われれば、自分でもそう思ってしまいます。
もちろん、違和感を覚えたものが、すべて自分に合わないとは限りません。
初めて挑戦することへの不安や、慣れていないことへの緊張が、違和感として表れる場合もあります。
だから、違和感に従って、すぐに何かを辞めたり、拒んだりする必要はありません。
大切なのは、その違和感が何に反応しているのかを見つめることです。
方法そのものに違和感があるのか。
相手との関係性に違和感があるのか。
自分が望んでいない未来へ向かっていることに違和感があるのか。
違和感は、答えではありません。
けれど、自分の判断軸へ戻るための入口にはなります。
私は、違和感を言葉にしていく中で、自分が売り込みたくない理由も見えてきました。
ただ営業が苦手だったわけではありません。
相手の判断を急がせたり、不安を刺激したりして、こちらの望む方向へ動かしたくなかったのです。
それが分かれば、「売り込めない自分を直す」という答え以外の道を探せます。
相手が自分で理解し、自分で判断できるように、必要な情報や体験を設計する。
一般的な方法を否定するのではなく、自分の価値観に合う構造へ組み替えることができます。
判断軸があれば、他人の答えを選択肢として受け取れる
自分の判断軸を持つことは、他人の考えを否定することではありません。
成功法則やマーケティング理論にも、たくさんの知恵があります。
誰かの助言によって、自分だけでは見えなかった可能性に気づくこともあります。
ただ、それを唯一の正解として受け入れる必要はありません。
自分の判断軸があれば、外から得た情報を「従うべき答え」ではなく、「選択肢」として受け取れるようになります。
自分に合う部分は取り入れる。
合わない部分は、理由を理解したうえで手放す。
そのままでは合わなくても、自分に合う形へ組み替える。
そうやって、自分で選ぶことができます。
誰かの方法を選ばなかったとしても、その人を否定する必要はありません。
人によって価値観が違えば、選ぶ答えも変わります。
お互いの違いを認めながら、自分の選択にも責任を持つ。
判断軸があることで、人は他人の答えに支配されにくくなり、同時に、他人を支配する必要もなくなるのだと思います。
本も対話も、その人の答えを奪わないためにある
味語り®の対話でも、私が相手の代わりに答えを決めることはしません。
相手が話す言葉。
声の変化。
迷いながら選んだ表現。
これまで繰り返してきた選択。
強く反応する出来事。
そこから、その人が何を大切にしているのかを受け取り、言葉にして返します。
言葉にされたものを見て、
「自分のことなのに、初めて聞く言葉のようです」
と話す方がいます。
自分の中から出てきたものなのに、自分ではまだ出会ったことのない言葉だからです。
けれど、それは、私が外から新しい答えを与えたわけではありません。
その人の中にすでにあったものが、見えるようになったのです。
Kindle本にも、同じ役割があるのだと思います。
私の人生や選択を読むことで、読んだ方が自分の人生を振り返る。
私の答えを採用するのではなく、
「私は何を大切にしたいのだろう」
「本当は、何に違和感を覚えていたのだろう」
「私は、どちらを選びたいのだろう」
と、自分への問いを持ち帰る。
良い答えを渡すことよりも、その人が自分で決められる状態を守ること。
それが、私にとって大切なことなのだと思います。
この本が、誰かの答えにならなくてもいい
この本を読んだ方が、全員同じ結論にたどり着く必要はありません。
副業を始める方もいると思います。
会社員として働き続ける方もいると思います。
独立する方もいれば、今の場所で働き方を見直す方もいるでしょう。
事業を大きくしたい人もいれば、自分の手が届く範囲で続けたい人もいます。
どの選択が正しいのかを、私が決めることはできません。
大切なのは、その選択が、自分の価値観とつながっているかどうかです。
私が渡したかったのは、「こうすればうまくいく」という答えではありません。
誰かの正解に自分を合わせる前に、
自分は何を大切にしたいのか。
何に違和感を覚えているのか。
本当は、どちらを選びたいのか。
その声に戻るための、判断軸です。
この本が、読んでくださった方の答えにならなくても構いません。
その方が、自分の答えを見つけるための静かなきっかけになればいい。
本を出した今、私は改めて、そう感じています。



